2015年5月、コソヴォにセルビア正教建築を見に行った旅行記です。デチャニ修道院を見に行きました。
目次
タクシーでデチャニへ行く
午前中はペーチ総主教修道院を見てきたので、午後はタクシーで南下してデチャニ修道院へ行きます。
拠点にしているペヤの街から16キロほど。車で片道30分くらいです。
ホテルで頼んだタクシー。若い運転手さんで、英語でたくさん地元案内をしてくれる人でした。
ただ・・・その地元案内というのが、「この村では300人死んだ」「ここの村は200人死んだ」「ここのレストランはうまい」というもので、うまいレストランと、激しい戦地となった場所の繰り返しでした。つい最近まで戦争をしていた国のリアル。
山間のほうに行きます。
ヴィソキ・デチャニ修道院
デチャニ修道院の入り口に到着です。
厳重警戒
EUマーク。そして、ここも当然のようにKFOR(コソヴォForce、コソヴォ治安維持部隊)が常駐している。
入場口は何やら工事中でした。
白い!美しい!デチャニ修道院
門をくぐると、工事中の雑な感じや物々しい雰囲気は一変。広い敷地内に端正な建物が鎮座していました。
凄ーい!白い!綺麗!!午前中に見てきたペーチ総主教修道院とは、色も形も全然違います。
綺麗で整った形の教会です。イタリアとかの教会建築に似ている。実際、大理石の色の違いでストライプ模様にするなどは、イタリアなど西ヨーロッパの影響を受けて作られたものらしいです。
(西欧のロマネスク様式とビザンティン様式の混合で、ラシュカ様式と言います。見てきた当時は全然そんな知識はなかったんですが)
横からみても綺麗。
中世セルビア王国のステファン・ウロシュ3世によって建てられた、14世紀の建築です。ちなみにこちらの修道院は内部のフレスコ画もすごかったんですが、写真撮影は禁止でした。
教会を囲む修道院の敷地は芝生と敷石で綺麗に整備されています。
ファサード部分の彫刻を接写。キリストの洗礼のシーンですね。
この教会のビザンティン建築らしいところ、ドームを接写。
シンプルです。
セルビアから見ても重要修道院
このときはただデチャニ修道院の美しさに感動するばかりでしたが、セルビアを旅行してきた今では、これらのコソヴォに存在する修道院が、セルビアにとってどれだけ重要修道院か、ということがわかります。
例えばこちらはベオグラードにある聖サヴァ大聖堂です。
この中で、中世セルビアの重要修道院を創った歴代君主たちがモザイク画で描かれていました。
こんな風に。
以下がピンぼけしてますが、デチャニ修道院を創ったステファン・ウロシュ3世。
手に抱えているのは横ストライプが特徴的なデチャニ修道院です。
また、コソヴォの独立を承認していないセルビアは、コソヴォをまるっきりセルビアの領土として扱ってる雰囲気がありました。グーグルマップで見てもセルビアとの国境は点線表示。
デチャニ修道院も含めたコソヴォの世界遺産の修道院はセルビアにとっては当然セルビアのもの…!と思っていると思う。
例えばこちら、クルシェヴァツというセルビア南部の街の高台にある公園です。
この公園の敷地内に、セルビア正教の重要修道院のミニチュア模型が、実際の国土の位置関係を模して設置されてます。わりと最近できたところです。
・・・ここに、当然のようにコソヴォの分の国土もあり、当然のようにペーチ総主教修道院、デチャニ修道院、グラチャニツァ修道院のミニチュアが置かれてました。
あまりにも当たり前にコソヴォの国土がセルビア領土として扱われている。この辺がセルビア国民のメンタリティなのか、と思いました。
セルビア正教会建築界の最高傑作
ちなみに観光客目線から言わせていただくと、セルビアで世界遺産になっているストゥデニツァ修道院とこのデチャニ修道院を比べると、建築物としての美しさ・完成度はデチャニ修道院の方が断然上!!です。
同じ世界遺産で、同じ「ラシュカ様式」とされているストゥデニツァ修道院は、白い大理石部分と茶色いレンガ部分と赤いドームが乗ったツギハギのような建物でした。
ビザンティン建築本を読んでみても、やはりデチャニ修道院を「ラシュカ様式の最高傑作」とする扱い。
ストゥデニツァ修道院のほうがだいぶ先(12世紀)に作られたので、それから技術や建築様式が切磋琢磨され洗練されて、14世紀にデチャニ修道院ができた、ということだと思うんですが。
セルビア的にはかつての自国の王が作ったものの一つだし、中でも一番できのいい修道院を国土ごと別の国の世界遺産となっているということで、なかなか認めたくないところがあるんじゃなかろうか。。。
(もちろんセルビアにあってコソヴォにはない美しい教会建築も多々あります)
ということで、非常に美しい修道院でした。これからも美しいまま、戦争や紛争で壊されたりしませんように。
(続く)