2018年12月。東ローマ帝国の痕跡を見に、トルコ、主にイスタンブールに行くことにしました。
目次
トルコにあるキリスト教の痕跡
アジアとヨーロッパの境に位置する国、トルコ。ご存じのとおりイスラム教の国ですが、その昔はキリスト教を国教とする東ローマ帝国(ビザンツ帝国)の領土だったところ。
トルコの地図を見ていると、初期キリスト教時代から十字軍の時代前後まで、キリスト教史に出てくる地名に出会います。ビザンティン教会好きの自分としては、そんな場所に残る教会建築を見てみたい。
また、トルコ東部には、かつてアルメニア王朝があったことからアルメニア教会の遺跡があったり、シリアとの国境近くには、シリア正教会の修道院が今も残っていたり。アルメニア教会とか、東方正教会好きにとってもたまりません。
ということで、キリスト教会史に出てくる歴史的地名を頼りに、トルコにある教会の痕跡をピックアップしてみました。
イスタンブール(コンスタンティノープル)
かつて1000年続いたビザンツ帝国の首都だった街です。今は博物館となっているアヤ・ソフィア(旧アギアソフィア)、カーリエ・ジャーミイ(旧コーラ修道院)、その他モスクとして使われているビザンティン様式の教会建築が街に残っています。こういうのを一つ一つ見て歩きたい。
イズニク(ニカイア)
モスクやトプカプ宮殿で使われているイズニクタイルの産地として有名な街。
ですが、ここはかつてニカイアと呼ばれたところ。325年、コンスタンティヌス帝によって第1回の全地公会議が開かれた街でもあります。今でもミサで唱えられるニカイア信条は、この地で行われた全地公会議で決まりました。
The Story of Turkey's Iznik Tiles and Where to Find Them | AFAR
最近、イズニク湖の湖底に4世紀ごろの教会の遺構が発見されたというニュースがありました。
観光できるようになるのはもっと先だと思いますが、時代としてはちょうどニカイア公会議の時代の教会です。いつか見てみたい。
エフェス(エフェソス)
聖母マリアがその晩年を過ごした街と言われているところ。また、431年と449年にキリスト教の公会議が行われた場所でもあります。今では古代ギリシャの大都市の跡地として世界遺産に登録されており、観光客で賑わっています。
聖母マリアが晩年を過ごしたという家。巡礼地となっているそうです。
House of the Virgin Mary in Ephesus | Turkish Archaeological News
カッパドキア
奇岩と気球で有名なカッパドキアですが、実は初期キリスト教時代から修道士が住んでいた場所。
キリスト教史の観点だと、「カッパドキア3教父」という3人の教父がすぐに思い浮かびます。4世紀、キリスト教における三位一体の思想を確立したことで、広く知られている人物たちです。
カッパドキアにいくつもある洞窟教会のフレスコ画には、だいたい、この偉大な3教父の絵が描かれているのだそう。
Cappadocia Tokali Church under restoration - Ephesus Travel Guide
また、近くのカイセリ(カエサレア)という街も、古代から繁栄していた場所。「教会史」の著者として有名なカエサレアのエウセビオスは、この街の司教でした。
時間を取って、洞窟教会を見て回りたい場所です。
アンタキヤ(アンティオキア)
古代はアンティオキアと呼ばれ、パウロの布教の拠点となった街。初期キリスト教時代には、エルサレム、ローマ、アレクサンドリア(エジプト)、コンスタンティノープル(イスタンブール)と並ぶ5大総主教座の1つだった場所です。
ただ、繁栄は長くは続かず、7世紀にイスラム帝国に侵略されて以降は、歴史に埋もれたイスラム文化圏の一都市となりました。一応、現在のシリアのキリスト教最大派閥であるアンティオキア正教会は、公的にはこのアンタキヤに総主教庁を置いています。(しかし実務はシリアの首都、ダマスカスで行っているとのこと。)
古代の街並みはほとんど残っていないようですが、考古学博物館や、郊外の聖ペトロ洞窟教会などで、この街の古い歴史を確認することができそうです。
トラブゾン
第4回十字軍がコンスタンティノープルを占領した際に、亡命政権としてトレビゾント帝国が作られたところです。その当時の創建になるアギア・ソフィアの内部にはフレスコ画やモザイクが残っているとのこと。今ではモスクとして使われています。
Trabzon Ayasofya Müzesi, Nasıl Gidilir - Konaklama
それから、ここから50キロほど離れたところに、スメラ修道院という洞窟と一体化した修道院があります。創建は6世紀。厳しい土地で修道士たちの修道生活が営まれてきたそうです。長いこと修復中でしたが、2019年6月に、一部がオープンした模様。
Sümela Monastery to undergo restoration for one year - Daily Sabah
アニ遺跡
10世紀にアルメニアの王朝と主教座があった街。
Archaeological Site of Ani (2016) | EBRULI TOURISM- IZMIR-TURKEY
この街には、かつて1000ものアルメニア教会が建てられたのだそうです。今見られるのはほとんどが廃墟ですが、いくつかは建物として残っています。ビザンティン様式とはまた少し違った雰囲気を持つ、アルメニア教会建築をたっぷり堪能できそうです。
Archaeological Site of Ani (2016) | EBRULI TOURISM- IZMIR-TURKEY
ワンのアクダマル島
トルコ東部にある湖沿いの街、ワン。このワン湖にあるのがアクダマル島です。この島にも素晴らしいアルメニア正教の教会が残っています。
'Akdamar Adası'na giriş ücreti alınmasın'
なんといっても外観のレリーフが有名です。
Akdamar Adası Hakkında Her Şey ve Akdamar Kilisesi Tarihi - Dünya Senin, Hadi keşfetsene!
マルディン・ミディヤット
東部アナトリア地方のミディヤットの街から20キロのところに、4世紀にさかのぼるシリア正教の聖ガブリエル修道院があります。
Süryani Cemaati'nde Mor Gabriel Manastırı'na ait malların iadesi sevinci
近くのマルディンという街にも、同じくシリア正教会のザファラン修道院という古い建物が残っています。こちらも5世紀にさかのぼる建築だそう。
Midyat & Mardin in Southeast Turkey
どちらも現役のシリア正教会の教会です。建物の外観は、教会というよりオリエントの古代宗教の神殿みたいな雰囲気。なお、ザファラン修道院のミサは今でも、イエス・キリストが生きていたときに使われていたアラム語で行われているそうです。
トルコのキリスト教関連マップ
8日間(観光は丸6日)で行くイスタンブールとワン
トルコは広いです。ひとまずイスタンブールはがっつり観光しようってことで、以下の航空券を予約しました。
1日目(日)20:15 イスタンブール着
8日目(日)13:00 イスタンブール発
観光できる日数は、2日目から7日目までの丸6日間です。この日程で、イスタンブール以外にも、面白そうな街に行ってみたい。・・・検討の結果、イスタンブール近郊のイズニクと、東部のアクダマル島のアルメニア教会を見に行くことにしました。カッパドキアも面白そうだったのですが、結構時間を取りそうだったので、今回は断念。
観光日程
1日目(日)20:15 アタテュルク空港着
2日目(月)イスタンブール観光
3日目(火)イスタンブール観光
4日目(水)イスタンブール観光
(イズニク日帰り)
5日目(木)13:10 アタテュルク空港発
15:25 ワン空港着
6日目(金)アクダマル島観光
7日目(土)12:30 ワン空港発
15:00 アタテュルク空港着
8日目(日)13:00 アタテュルク空港発
宿泊地
イスタンブールの観光はボスポラス海峡沿いに集中しています。ということで、窓とバルコニーからボスポラス海峡が見えるというこちらのホテル。
ワンのアクダマル島へはバスなどで行けるみたいですが、タクシーチャーターなどに相談に乗ってくれそうなこちらのホテルを予約。
実際、宿泊前から何度もメールで相談に乗ってもらいました。感謝です。
(続く)
≪イスタンブール旅行計画≫
- イスラム教の街の中を、教会跡地をめぐって歩き回りまくり
- アヤソフィアとか考古学博物館とか、1日博物館めぐり
- 夏向け宮殿を冬に見る。涼感タイルの鮮やかなトプカプ宮殿
- ボスポラス海峡を挟んで新旧市街をうろうろ。ガラタ塔とか、グランドバザールとか
- 都会を離れてひと息。イズニク日帰り旅行
- 歩いてわかる、この街の奥深さ。ちょっと変わった博物館、カフェ、現役キリスト教会